【腰痛施術の教科書】施術の考え方と施術方法

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腰痛,ぎっくり腰腰痛には、様々な原因があります。筋肉、関節、神経など本当に様々です。そして腰痛の施術にも、ストレッチ、体操、運動療法など様々な手法があります。しかし、その多くは的確な原因が特定されないまま、施術をされいる場合も少なくありません。

腰痛は正しく理解すれば、比較的早期に改善させることができます。
さらに、ぎっくり腰の再発率を低下させることも
できます。

この記事では、ぎっくり腰、非特異的腰痛を中心に、腰痛施術にあたる施術家が必ず押さえておくべき間違った腰痛の知識、腰痛施術のポイント、再発する原因について分かりやすく説明しています。

腰痛の85%は、画像検査は明らかな異常のみられない「非特異的腰痛」といわれています。そう、腰痛のほとんどは腰に原因がないということなんです。そして、ぎっくり腰の再発率を研究した論文によると、12ヵ月以内での再発率は73%に上るといいます1)

腰痛施術に現役で携わる柔道整復師の経験とデータを元に、具体的な腰痛施術の方法を説明します。

Contents

腰痛が治らない理由は…、
実は腰痛に関する”常識”がそもそも間違っていた!!

腰痛施術は進化している?腰痛患者は毎年伸び続けています。なぜこれだけ医療が進歩しているにもかかわらず、そしてこれだけ整形外科が増え、整骨院などの治療院も増え続けているのに腰痛の患者さんは減少しないのでしょうか?

さらにここ数年、治療院業界では各地で腰痛をはじめとする技術セミナーが毎週のように行われています。医療が進歩し、また私たち施術家の技術力も確実に向上しているはずなのに、一体なぜ腰痛の患者さんは減らないのでしょうか?

その理由は、いたってシンプルです。そう、腰痛に対する知識がそもそも間違っているからです。治るわけのない治療を続けても治ることはありません。これが答えです。

では、一体何が間違っているのでしょうか?そしてなぜ治らないのでしょうか?わかりやすく説明させていただきますね。

なぜストレッチをしても腰痛は治らないのか? -腰痛と柔軟性の関係

腰痛とストレッチ多くの先生は「硬いから腰痛になるんだよ」と言います。だから、患者さんも「私硬いから…」と、こういうわけです。だから、施術でストレッチをはじめとする柔軟性を高める施術がよく行われます。そこでよく行われるのがスタティックストレッチ(静的ストレッチ)ですね。スタティックストレッチというのは、20~30秒ほど持続するストレッチで、柔軟性の向上にとても有効とされています。

さて、本当に身体が硬いから腰痛になるのでしょうか?もちろん、最低限の柔軟性は必要ですが、ストレッチだけで本当に腰痛が治るでしょうか?答えは「ノー」です。もちろん、ストレッチ等によって腰痛が改善するケースはあるかもしれません。でも、それは腰痛を根本的に改善したということではありません。なぜなら、柔軟性を高めても腰痛にはなるからです。例えばバレリーナや新体操の選手は腰痛にならないでしょうか?ってことです。柔軟性を高めたところで、腰痛は治らないのです。

–ストレッチしてはいけない筋肉がある???

腰のストレッチストレッチには様々な効果があります。柔軟性の向上、筋の粘弾性の向上、血流量の増大など、他にも様々な効果が期待できます。しかし、ここで注意しておかなければならないことがあります。それは、「筋出力が低下する」ということです。どういうことかというと、スタティックストレッチによって伸張された筋は、「抑制」といって力が入りにくくなってしまうのです。ということは、本来安定性に寄与している筋に対してスタティックストレッチを行えば、安定性を損なってしまうということになります。だから注意が必要なんです。

しかもその効果は、3時間ほど持続すると言われていますから、例えばスポーツの前にこのスタティックストレッチをすると、パフォーマンスが低下する可能性があるのです。

-筋力強化をしても腰痛が治らない理由とは? -腰痛と筋力低下の関係

腰痛と筋肉筋力を強化すると、腰痛は治るのでしょうか?では逆に、筋力がない人は必ず腰痛になるでしょうか?ちょっとこう考えてみてください。ボディビルダーの方は腰痛にならないでしょうか?なりますよね。そうなんです。いくら筋肉を強化しても腰痛になるとかならないとかには影響はないのです。

いまだに「腹筋をしなさい」とか「背筋をしなさい」とよく言われます。さらに「腹筋と背筋のバランスが…」なんてことを連呼ている方もおられます。しかし、そもそも腹筋や背筋運動は腰痛になるリスクがあります。

–腹筋や背筋をすると腰痛になる理由

腰痛と腹筋理由は2つ。1つ目の理由は腹筋も背筋もその走行上、強化する際に脊柱に圧迫力が強くかかってしまうということ。2つ目の理由は、実は腹筋をするとインナーマッスルは抑制され、体幹機能は低下してしまいます。体幹機能が低下してしまえば、脊柱の安定性は損なわれてしまい、結果的に腰痛発症リスクが高まってしまいます。このような理由から、腹筋や背筋はお勧めできません。

-運動しても腰痛は治りません! -腰痛と運動不足の関係

腰痛と運動「運動不足」という言葉…、いつからよく聞くようになったでしょうか?運動しないのはよくない、運動したほうがいいに決まっている。そんな風潮がありますよね。でも実際はどうでしょうか?残念ながら運動されている方の方がよっぽどケガや腰痛は発生しています。

とはいえ、適度な運動は有効であると思います。運動することによって全身の血流がよくなったり、自律神経系への影響から腰痛が楽になるケースは十分に想定できます。しかし、運動不足と腰痛に深い関係はありません。ただ注意すべき点は、運動をしていても腰痛になってしまうという点です。

-姿勢がよくなっても腰痛は治らない!? -腰痛と姿勢の関係

「姿勢をずっと正していたら、余計に腰が痛くなった!」そんな経験はないでしょうか?姿勢は、意識的にいくらでも変化させることができますよね。だから…

【 姿勢がいい = 腰痛にはならない 】

という図式は間違っています。姿勢が良くなったところで、腰は傷めてしまいます。なぜなら、姿勢が悪いこと自体が腰痛の原因になっているわけではないからです。ちなみに姿勢がいい人も腰痛にはなります。

–実は…姿勢の保持に問題が…

基本的に同じ姿勢をしていると、腰が痛くなります。これは正しい姿勢でも悪い姿勢でも同じです。同じ姿勢を保持していると、同じ部分にストレスがかかり続けます。だから、腰痛が発生するのです。幼稚園児や保育園児を見てみてください。「じっと座ってなさい!」と先生が言っても、モゴモゴ動いてますよね。だから、身体は疲れても肩や腰が痛くなるということが少ないんですね。その点、大人は「忍耐」という神業を使えます。実はこれが腰痛を引き越している原因となっているのです。

-シップは冷えない、治らない!? -腰痛と痛み止めの関係

シップ(湿布)とは、経皮的消炎鎮痛剤のこと。温感湿布とか冷感湿布と言って、温かく感じたり、冷たく感じたりします。でも実際にはほとんど組織の温度変化はありません。ちなみにどちらのシップも皮膚の表面温度を1度だけ下げます。これは気化熱によるもので、たいした効果はありません。だから冷やすために…とか、温めるために…という目的で湿布を使ってもそれほどの効果は望めません。

–痛み止めはいいの?悪いの?腰痛と痛み止め

結論から言いますと、施術期間中の服用はお勧めしません。しかし、痛みがあまりにもひどい場合、通院できない場合などこのようなときは、服用したり貼っていただいて構いません。でも忘れないでください。痛み止めはあくまで「痛みを止めている」だけです。決して組織の修復が進むわけではありませんので、逸早く施術を受けていただくことが理想と考えます。

-腰痛が慢性化してしまう意外な理由とは? -腰痛とサポーターの関係

ぎっくり腰ほどの痛みではないけど、常に腰がだるい、もしくは重いという症状が3ヶ月以上続く場合、慢性化した状態と言えます。腰痛が慢性化する原因は社会的要因、精神的要因、機能的要因など様々ですが、実はサポーターを肌身離さずつけている方は、慢性化のリスクは高くなってしまいます。

–サポーターをするとセンサーがバカになる!?

これからお話しするのは、腰に限ったことではありません。関節、関節包、筋肉などにはたくさんのメカノレセプター(センサー)が存在します。このメカノレセプターは、何をしているかというと、どれくらい関節が曲がっているか、どれくらい筋肉が伸びているか、どれくらい負荷がかかっているかなどの情報を脳へfeed backしています。そして、その後その情報は脳で処理され、身体をコントロールしています。

しかし、サポーターをしていると、そのメカノレセプターは、さほど機能しなくてもよくなるので、結果的に”バカ”になってしまうのです。このような経験はないでしょうか?サポーターを取ったら、なんか腰が不安定な感じがするとか、力が入りにくくなるとか…。これは、メカノレセプターが”バカ”なっている証拠です。

-筋肉は緩めたらダメ!? -腰痛と筋肉の硬さの関係

腰痛 筋肉かたいそもそも【硬い=痛い】は違いますよね。筋が硬いから緩める。これだけでは、いけません。理由は簡単です。硬くなった原因はそのままだからです。だから筋はまた硬くなってしまいます。

ということは、筋が硬くなった原因自体にアプローチする必要があるのです。さらに、筋が硬くなった理由があるということは、筋を緩めることで、何か弊害が起こる可能性もあります。例えば、痛みを守るために硬くなっていたのであれば、筋を緩めることによってその痛みが増大してしまう可能性があるということです。

–筋肉を緩めるとこんなことも…

ちなみに、筋は緩めると同時にある他の効果をもたらします。それは「抑制」です。そうです。筋は緩めると抑制されてしまうのです。抑制という状態は、筋出力が低下した状態ですから、いわゆるスタビライザーとなる筋を緩めてしまうと、体幹の安定性は損なわれてしまします。

-実は歪んでいるのは”正常”なんですよ! -腰痛と歪みの関係

腰痛と歪み人間という動物は、手の長さも足の長さも左右で違います。顔も左右で違いますよね。左右差はあって当たり前です。その左右差を補正するために、骨盤や背骨がうまく歪んでいるわけです。これは異常でしょうか?では、その歪みを正すことで腰痛は治るでしょうか?様々な理論はあるでしょうが、これでは腰痛を根本的に改善することはできません。

さらに、もし歪みが全ての原因であるならば、その歪みさえ治すことができたら腰痛は再発することはないでしょう。

-マッサージは筋肉を硬くする? -腰痛とマッサージの関係

マッサージはとても気持ちいいです。マッサージをすると筋肉が柔らかくなって…と、ちょっと待ってください!確かにマッサージの直後、筋肉は柔らかくなります。上手なら(笑)。でも、その後数時間で筋肉は前の状態よりも硬くなってしまいます。だから、マッサージをすればするほど筋肉は硬くなってしまうんです。

–マッサージでも筋肉は抑制される!?

そう、実はマッサージでも筋肉は抑制されてしまいます。マッサージによって筋肉の緊張が取れてしまうため、筋出力が低下してしまうんです。だから、むやみやたらにマッサージをするというのは全くお勧めできないのです。(腰痛を改善するという目的では)全身マッサージなんかはもってのほかです。ほんとかよ!そう思われる方は、ぜひ実験してみてください。(患者さんにはしないでくださいね。)

–実験!?

まず、被験者の肩関節を外転90度として保持してもらいます。先生は、手関節あたりを把持して上から力を加えて下さい。その時の力の入り具合、筋力をよ~く覚えておいてくださいね。次に、被験者にはリラックスしてもらい、肩関節外転筋の代表格である三角筋を上肢下垂位でマッサージします。5~10秒くらいでOKです。

では、もう一度被験者に肩関節を外転90度で保持してもらいましょう。そして先生は同じように手関節を把持して、上から力を入れてみてください。

「え~~~!?」「力が弱くなってる!!」
そうなんです。これはマッサージによって筋が抑制されたためです。これを腰痛の患者さんの患部に行なったらどうでしょうか?まずいですよね?だから先生もアプローチするときは十分に気を付けて下さいね。

-腰痛の85%は非特異的腰痛…? -腰痛の原因は”腰”じゃない!?

腰痛の画像画像検査では明らかな異常のみられない非特異的腰痛は、85%を占めると言われています。先生も何度か聞いたことがあるのではないでしょうか?

しかし、この数字をどうとらえるか、そこが重要なポイントになります。具体的に説明します。

画像や所見で腰に異常がないということは85%の腰痛は、腰という構造体に損傷がないということが証明されたわけです。そう腰は問題ないということです。ということは、画像所見では写らない何か、もしくは腰以外のところに腰痛の原因があるという証明になったわけです。

よって、ぎっくり腰のように腰自体に原因がある場合は、患部へのアプローチが必要となりますが、患部の組織修復が完了すれば、腰へのアプローチは全く意味がないということになります。

 

このようにストレッチ、筋力強化、歪みの改善、姿勢改善、筋肉を緩める…このような方法では腰痛を根本的に改善することはできません。事実、腰痛患者は増加しているということが何よりの証明です。

では、どうしたらいいのでしょうか?
そもそもなんで腰痛になってしまうのでしょうか?

 

戦略的に腰痛を攻略する具体的な方法とは?

今までの常識、基本概念では結果的に腰痛罹患者が減ることはありませんでした。むしろ増加傾向です。ということは、今までの考えは間違っているということです。よって、今までの基本概念のもとでいくら施術法を模索しても腰痛は改善しないということになります。その証拠たるものこそ、現状の腰痛患者数であり、先生方もご理解いただいていることかと思います。

-構造的破綻と機能的破綻

では一体、どのようにして腰痛を改善すればいいのでしょうか?その前にまずは、腰痛の本当の原因、いわば根本原因を知る必要があります。原因がわからなければ治すことはできませんから、その根本原因を見つけ出す必要があるわけです。そこで重要な考え方となるのが【構造的破綻】【機能的破綻】という概念です。腰痛は、この2つの概念をもとに戦略的に攻略する必要があるのです。それでは、この2つをわかりやすく説明させていただきます。

 

構造的破綻とは?

ぎっくり腰をはじめとする原因が明らかな腰痛の多くは、「腰」という構造体自体が損傷した状態です。構造体とは、具体的に腰椎椎間関節、多裂筋や脊柱起立筋などの筋肉、仙腸関節、靭帯など「腰」を構成する組織を指します。これらの組織が損傷(破綻)したものを構造的破綻といいます。

-腰痛の原因(構造的破綻)を特定するための重要な3つのポイント

何がどうなって腰痛を引き起こしているのか?腰という構造体の損傷を的確に把握するためには、問診、評価、病態把握の3つのポイントを押さえておかなければなりません。

–問診 -レッドフラッグを除外するために重要なこととは?

腰痛の問診

まずはじめに重要なのは、「重大な脊椎病変」であるレッドフラッグを除外すること。レッドフラッグには、悪性腫瘍、脊椎感染症、骨折などがあります。この記事では、「非特異的腰痛」を中心に解説しているので、詳細は割愛しますが、レッドフラグを除外するためには、この問診が最も重要な項目になります。

—既往歴

過去にかかったことのある病気やケガ、手術歴などを聞き取ります。例えば、悪性腫瘍の既往がある患者さんの場合は、再発、転移などを念頭に注意深く、問診や検査へと進めていく必要があります。他にも膠原病や外傷歴も聴取しておきます。

—受傷機転 -病態を推測するための重要なヒントが隠されている?

腰痛の受傷機転受傷機転が不明な場合は、レッドフラッグの可能性も視野に入れておく必要があります。明らかな受傷機転がある場合で、レッドフラッグを除外できる場合は、腰部の構造体自体に組織損傷を起こしていることが示唆されます。

また、どのような経緯で腰痛が発症したのか?腰痛が発症した具体的な状況を聞き取ります。
例えば…「自宅で掃除機をかけていた」ではなく、「自宅で、棚の下を掃除機をかけようとして、少し前かがみになった瞬間に痛みが出た」と、受傷時の情景が思い浮かべれるようなレベルで聞き取ります。なぜそこまで聞き取る必要があるかというと、実はこの受傷機転からある程度の病態を推測することができるからです。

ぎっくり腰をはじめとする腰痛は、様々な原因で発症しうるのですが、ここでは一般的に多い原因について解説させていただきます。

—-起床時の腰痛

ここではレッドフラッグを除外してお伝えしますが、起床時に腰痛が発症する場合は、様々な原因が考えられます。その前に、発症原因を明らかにしておく必要があります。目が覚めたときにすでに痛くなっていたのか、起き上がるときに「ギクッ」となったのか。その発症原因の違いで、患者さんへの説明も変わってきます。多くの場合は、いわゆる”寝違え”の状態で、筋肉や関節に原因が存在することが多いです。

—–寝具の問題 -低反発マットレスよりも高反発マットレスをお勧めする理由

これは個人的見解です。私は高反発マットレス、スプリング系のマットレス、普通の布団をお勧めしています。理由は簡単です。寝返りをしやすいかどうか?という点です。低反発系のマットレスは、身体が沈みますので、寝返りがしにくくなります。その結果、同一姿勢を長時間保持することになりますので、寝違えを起こす可能性が高くなってしまうんですね。

—–軽度の脱水

腰痛と脱水体重の約1%の水分が失われると、軽度の脱水です。一般的に汗をかいたときや、のどの渇きを感じたときはすでにこの状態です。日常生活の中では、入浴時、睡眠時、飲酒時に体内の水分量は低下します。入浴時や飲酒時は、水分を摂ろうと思うといつでも取ることは可能ですが、睡眠時はそうはいきません。だから、寝る前までに効率的に水分を摂取しておく必要があります。脱水となれば、筋肉をはじめとする身体組織は正常の活動ができなくなってしまうので、寝違える可能性も高くなるのです。

—–睡眠時間

睡眠時間が長くなると、上記にも書きました脱水の可能性も高まります。そもそも寝ている時間が長くなるというとは、それだけの間、水分を摂取していないわけですから、脱水になりやすいと言えます。また、睡眠時間が長くなると、身体リズムや長時間臥床による身体への影響等から、腰痛を引き起こす可能性があるのです。

—-中腰姿勢でモノを持った場合

腰痛の中でも、いわゆるぎっくり腰の発生原因として最も多いのが、中腰姿勢での負傷ではないでしょうか?中腰姿勢での腰痛発症では、筋肉が原因となっているもの、関節が原因になっているもの、そして両方が組み合わさったパターンがあります。

例えば、関節が原因となる場合の多くは、この中腰姿勢でのぎっくり腰では多く見られます。関節は、許容範囲を超えた動きが強いられると負傷します。しかし、多くの関節は連動したり、そもそも大きな可動域、遊びがあるので、容易に負傷することはないのですが、仙腸関節の場合は考える余地があります。仙腸関節は通常2~3㎜程度の動きがあるとされています。他の関節に比べて、その運動範囲はとても少ないです。その運動範囲ギリギリの状態で仙腸関節に負荷がかかった場合、許容範囲を超える動きが強いられることとなり、ぎっくり腰が発症してしまうのです。

筋肉が原因となる場合は、次項が参考になります。

—-インナーマッスルとアウターマッスル

中腰姿勢になるとき、筋肉はどのようなメカニズムで動作を遂行しているのか?これがわかれば、中腰姿勢でのぎっくり腰の発生メカニズムを理解することができます。通常、中腰姿勢を取ろうとしたとき、まずはインナーマッスルが収縮し、体幹を安定させます。そして、体幹を安定させた状態でアウターマッスルが収縮し、身体を動かします。このメカニズムが破綻すると、ぎっくり腰は発生してしまいます。

例えば、インナーマッスルが正しく収縮しないままアウターマッスルが収縮してしまうと、体幹の安定性が保証されていない状態で身体を動かすことになるので、アウターマッスルは過収縮してぎっくり腰が発症してしまいます。これは、何も中腰姿勢に限ったことではありません。ふと手を伸ばした時や、くしゃみの時にも起こりうるのです。

—-筋の発火異常

筋肉を動かしているのは、「脳」です。脳はどの筋肉をどの順番で収縮させるか、ということをコントロールしています。様々な原因で、その順番や筋主力の調整がくるってしまうと、正しい運動を遂行できないためにぎっくり腰を発症させてしまうことがあります。

—症状

どのような動作で疼痛があるか、安静時痛の有無、熱はないか、夜間痛、痛みの性質などのほか、腰以外の部位に出現している症状についても聞き取ります。動きによって痛みが変わらない、安静時にも同レベルの痛みが持続する、夜中痛みで目が覚めるなどの症状はレッドフラッグのことがあるので注意が必要です。

 

このように、問診では様々なことがわかります。適切な問診を行うことができれば、問診だけで8割の病態がわかります。手間や時間はかかりますが、問診はぜひ極めていきたいものです。

–評価 -さらに病態をあぶりだす適切な評価とは?

問診ではとらえきれない病態や、細かな病変を突き止めるために重要なのが評価です。評価で注意すべき点は、一切の先入観を排除するということです。「これはおそらく○○が問題で○○が炎症を起こしているだろう」と、頭の中で病態を確定させた状態で評価をしてはいけません。なぜかというと、先入観をもって評価をすれば、おのずとそのように寄せた評価になってしまうからです。

腰痛の評価には、様々な評価法がありますが、その中でも重要な評価についてお伝えしておきます。

—神経学的所見

非特異的腰痛では、神経学的所見は見られませんが、腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などではみられます。神経学的所見とは、神経系に何らかの異常があるとき、どの部位に障害があるのかを判定する際に用いる検査です。

神経学的所見では反射・知覚検査・筋力検査・理学的検査を行います。これらの所見をとることによって、神経に何らかの異常があるのかどうかだけでなく、神経の障害レベルを判断することもできます。 

ここで、腰椎椎間板ヘルニアなどの神経障害のある病態を除外します。

—運動時痛

ぎっくり腰をはじめとする腰痛の多くは、運動時痛を伴います。どの方向に動かしたときに、どこが痛いか。それによって病態は変化するため、評価の再現性を高めるためにも、評価方法を統一するようにしておきましょう。今回お伝えする運動時痛は前屈痛、後屈痛、回旋痛の3つです。難しいことは一切排除した、たった3つのシンプルな評価方法をお伝えします。

—-前屈痛

前屈すると腰部椎間関節では上方に滑り、起立筋をはじめとする体幹の伸筋群は伸張されます。そして仙腸関節では、仙骨にニューテーションが起こります。ということは前屈痛がある場合は、これらの機能が障害されている可能性があることを示唆します。なお、ここで評価するのは前屈の角度ではなく、疼痛の発現部位とその角度です。前屈した際に、どれくらいの角度で腰のどこに痛みが生じるのか?これを評価します。

—-後屈痛

後屈時には椎間関節は下方に滑り、仙腸関節では仙骨のカウンターニューテーションが起こります。特にL5/S1間には強い圧迫がかかります。これは関節面の傾斜の関係で、上~中位腰椎の椎間関節は矢状面上で形成されていますが、L5/S1椎間関節では、前額面にかなり偏向している。そのためこの部位への圧迫力が強くなるのです。また、後屈運動によって多裂筋や起立筋は短縮位となるため、短縮痛が出る場合もあります。

—-回旋痛

回旋すると、同側の椎間関節は離開し、対側の椎間関節には圧迫力がかかります。さらに回旋時は、捻じれのストレスがそのまま仙骨にまでかかることを見逃してはなりません。また、頸椎をのぞいて脊柱の回旋可動域は40度ほど。腰椎単独での回旋可動域は5度程度で、残りの35度は胸椎で行われています。どちらへの回旋時にどこに痛みが生ずるかはとても重要な所見となります。

—可動域検査

ぎっくり腰患者では、痛みのためなかなか可動域検査を正常に行うことは難しい。その場合は、患者さんの姿勢(体幹前傾位、骨盤後傾位など)を詳細に記録し、最終的な病態把握につなげます。また、急性期以外の非特異的腰痛の場合は、次のように運動痛を評価していきます。ここでも、再現性を確保するために評価方法は統一しておくべきです。

—-前屈可動域

前屈可動域はFFD(Finger Floor Distance )にて計測できます。FFDは前屈した際の指尖と床の距離を測り、どれくらい前屈できるかを評価する方法です。いわゆる立位体前屈ですね。具体的には、立位にて両足をそろえ、ゆっくりと前屈してもらい、FFDを計測します。正常との比較は難しいが、多くの場合、痛みのため明らかな可動域の低下を認めることが多い。なお、FFDも重要であるが、前屈時に腰椎-骨盤-股関節リズムを観察しておくことのほうが重要である。

前屈可動域の低下は、脊柱起立筋や多裂筋などの体幹伸展筋群の硬化や過緊張、椎間関節での強い炎症、仙腸関節炎などが疑われます。

—-後屈可動域

FFDのように、後屈可動域も指尖と床を計測する方法もあるがそこまで重要ではない。前屈時の可動域検査と同様に、足をそろえた状態でゆっくりと後屈してもらう。前項でも書いたが、多くの場合、痛みのため明らかな可動域の低下を認めることが多い。そのため、後屈時の腰椎-骨盤-股関節リズムを観察しておくことのほうが重要である。

—-回旋可動域

「腰痛患者において、回旋可動域が非対称性を示すエビデンスがいくつかある(Gomez 1994)」とあるように、回旋可動域は必ずチェックしておきたい項目です。

評価方法は、まず立位にて足をそろえ、両肘を曲げてもらいます。その状態で骨盤を固定し、体幹を回旋してもらいます。このときの左右差をみます。体幹の回旋は胸椎で40°、腰椎で5°、残りの回旋は股関節で行われています。「腰を捻る」のほとんどが胸椎と股関節の回旋によるのです。

—各種理学検査

腰痛の病態を明らかにするため、様々な理学検査が存在する。ここでは、私が特に重要としている2つの検査を、私見を含めて解説します。

—-SLRT

通常、坐骨神経伸張テストとして、ヘルニア等を判断する際に用いられる理学検査です。しかしここで評価するのは、仙腸関節、L5/S1のfacet、多裂筋の緊張などです。

患者を背臥位とし、膝関節伸展位で下肢を挙上します。このとき、ハムストリングスが坐骨結節を引っ張るため、仙結節靭帯が緩んでいる状態、すなわち仙骨のカウンターニューテーションが起こっている状態であれば、腸骨は後方回旋します。よってSLRにて角度に左右差がみられれば仙腸関節の障害を示唆します。

そして、仙結節靭帯が緊張している場合では、そもそも仙骨がニューテーションしている状態ですが、この場合はSLRの角度に左右差がないにもかかわらず、腰痛が発生することがあります。このような場合は、2つの原因が考えられます。1つは、仙骨を介してL5/S1の椎間関節に離開力が働くために疼痛が発生するということ。もう1つは、仙骨にさらにニューテーションを強制することで多裂筋に伸張力が加わり、疼痛が発生するということです。

基本的にはこのSLRの評価では、挙上角度の左右差と腰痛の再現などを評価します。

柔軟性は評価しませんが、60°以下の方はぎっくり腰の発生頻度が高くなるばかりか、腰が痛くなった時の治療にも時間がかかる傾向にあります。スポーツ選手では、膝伸展位での股関節の屈曲角度が低下するため、それ以上の角度は腰部に負荷をかけることになりますので、よって左右差がなくてもSLRが60°以下の方には、ジャックナイフストレッチを指導してあげましょう。

—-FNST

FNSTも通常は大腿神経伸張テストとして用いられる理学検査です。しかし、ここで評価するのは仙腸関節の機能障害です。

患者を伏臥位とし、膝関節をゆっくり屈曲します。このとき、膝関節の屈曲によって大腿直筋が下前腸骨棘を引っ張り、腸骨を前方回旋させます。このFNSTでの評価は、膝関節屈曲時の角度の左右差と腰痛の再現を評価しますが、2点注意すべきことがあります。1つは、FNSTを行う際に骨盤が前傾しないかということ。骨盤の前傾が入ると、L4/5/S1へストレスがかかるために、椎間関節障害との鑑別ができなくなってしまうからです。もう1点は、しり上がり現象が出現していないかということです。しり上がり現象が出るほど膝を屈曲させてしまうと、腰椎に伸展や回旋が入るため正しい評価はできません。

このFNSTの評価は、屈曲角度の左右差と腰痛の再現などを評価します。

FNSTにおいても柔軟性は評価しませんが、膝関節疾患がない患者さんでHHD(Hip Heel Distance)が10㎝以上の場合は、股関節伸展時に腰椎に伸展ストレスをかける可能性があるので、大腿直筋の柔軟性を高める必要があります。

–病態把握 -所見から腰痛の病態を把握する

実はこれが一番難しい。先生は、数学?算数かな「連立方程式」を解くのは得意でしょうか?所見から病態を把握するのは、まさにこの連立方程式を解くのと同じです。まずは、所見をテーブルの上に並べ、そして所見の関連性を考えながら答えを導いていく作業を進めます。進め方は、基本的に医師が行う「除外診断」の方法と同じです。

この所見と想定している病態は一致しているのか?想定した病態は、確実に除外できるのか?他の所見はその病態と一致するのか?これを繰り返して、最終的に1つの病態をあぶりだします。最後に、最終的に想定した病態とすべて所見の整合性を確認します。このように、所見から病態を特定していきます。

 

機能的破綻とは?

「腰」という構造体自体が損傷した状態を構造的破綻といいますが、それに対し、構造体を損傷させる原因である身体の機能的な異常を機能的破綻といいます。具体的には、筋出力の低下と亢進、筋の発火順の不整、筋の反応性の低下などのモーターコントロールの異常(機能低下)が構造的破綻を引き起こすのです。

-モーターコントロールとは?

モーターコントロールとは、運動の根幹的メカニズムを統制もしくは指揮する能力とされています。直訳すると運動制御です。そしてその中枢部、すなわち運動の制御を行っているところが中枢神経系(CNS)となります。

不規則で非協調的な遅延した運動制御は、筋骨格系の他動および自動構造を損傷させる可能性があります。つまり、運動制御がひどく遅延すると、関節、靭帯、腱や筋に生体力学的過負荷が加わり、微細損傷を起こす可能性があるのです。

–CNSの役割とは?

CNSの役割は、持続的に安定性と運動の状態を解釈して、予測可能な変化に対する運動プランを作ること。そして予測不能な変化に対して急速な対応を講じることです。さらに、末梢のメカノレセプターおよびその他の感覚入力からの求心性情報を解釈し、適切なタイミングおよび活動量で筋を働かせることです。

-なぜぎっくり腰は再発するのか? -ぎっくり腰は癖になるというのは間違っている!?

ぎっくり腰などの急性期では構造的破綻が起こっています。このような場合は、損傷した組織を修復させるための施術が必要となります。多くの施術家はここで施術が完了します。メンテナンスといいつつ、単にマッサージをしているだけ…というところも少なくありません。

しかし、腰痛の再発率を低下させるためには、病態が発生しうる身体の機能的破綻(機能低下)への施術が重要となることはあまり理解されていません。

–ぎっくり腰、腰痛の原因となる機能的破綻とは?

最初は、モーターコントロールに異常がなくとも力学的負荷などにより腰痛(必ずしも腰痛ではない)が発生し、もしくは誤った使い方の繰り返しによりモーターコントロールに異常が起き、機能低下を引き起こします。そしてその機能低下が原因となりまた腰痛になる。これを繰り返しているのです。

よって腰痛の病態だけへの構造的なアプローチでは、その時の症状は改善しますが、その根本である機能的な問題は残っているので、また些細な原因で腰痛を発症させてしまうのです。

つまり、「ぎっくり腰が癖になる」のではなく、そもそもぎっくり腰が発生原因である機能的破綻(機能低下)への施術が行われないために、ぎっくり腰を引き起こしてしまっているのです。

–ぎっくり腰はどれくらいの確率で再発するのか? 

再発の累積リスクについて論文1)では、「患者の73%は12か月以内に少なくとも1回再発した」とされています。さらに…3ヵ月以内の再発率は26%、3年後では84%の再発の累積リスクがあると報告されています。

・3ヵ月以内の再発率26%
・12ヵ月以内の再発率73%
・3年後の再発率84%

ぎっくり腰再発率は高いだろうと、何気に言っていたことも、こうして明確な数字で表すとその重大性に驚かされます。

-腰痛の根本的な原因である機能的破綻を評価する具体的な方法とは?

動きを制御している「脳」でのエラーを様々な検査で見つけ出し、修正することで機能的破綻(機能低下)を改善し、腰痛の再発率を低下させることができます。機能的破綻(機能低下)を評価するためには、次の3つの視点が鍵となります。

–筋出力の低下

筋力低下と考えられているものは、実は筋が抑制された状態である可能性があります。そして主動筋の筋力低下は、スタビライザーの機能不全による可能性もあります。また、主動筋の機能不全は、実際は拮抗筋の問題である可能性もあるのです。

筋出力の低下は、一見筋力低下と似ている。ここで筋出力と筋力について少し解説しておく。筋出力は、筋自体の能力というよりはむしろ、筋を動かしている脳がコントロールしている。筋力は筋断面積に比例する筋自体が持っているパワーである。

—中殿筋の筋出力が低下すると…

例えば中殿筋は、通常股関節を安定化させるために大変重要な筋です。その中殿筋の筋出力が低下してしまえば、股関節の安定化を図ることができず、対側の脊柱起立筋(PVM)に過剰な負荷をかけてしまいます。その結果、腰痛を引き起こす可能性が高まってしまうのです。

—腹横筋が機能低下すると…

腹横筋は、体幹の安定化作用があります。またopen loop制御下では、腹横筋はまず初めに収縮する筋です。よって腹横筋が低下すると、体幹の安定化機能が欠如した状態で動作が遂行されるため、体幹へのストレスが過度となってしまいます。

このように筋出力の低下は、通常の活動において多大な影響を与えることがわかります。

—筋出力を評価する方法

通常「筋力」は、MMT(徒手筋力検査)で評価します。筋出力も同様に徒手抵抗をかけて検査します。ただ、筋出力は”低下”していることだけが機能低下ではありません。というのも、筋出力が亢進している場合でも、相反神経抑制により結果的に機能低下につながってしまう場合があるのです。

–筋の発火順異常

open loop制御下では、運動前に筋の収縮順が定義されます(プログラム理論)。そして、運動を遂行する指令と同時に、そのプログラムされた筋の収縮が順に始まります。基本的に動作遂行中は、予測不能なことに関しては対応することはできません。しかし、これではすぐに障害が起こる可能性があるため、多くの場合、脳は末梢からのfeed backをもとに制御も行っています(closed loop制御)

—筋の発火順が腰痛に及ぼす影響

例えば、脊柱起立筋(PVM)は大きな力を持っている。よって早期もしくは過剰な収縮は脊柱に対して圧迫力を強め、腰痛の原因ともなります。先行研究においても「大殿筋の活動遅延や弱い筋活動が代償的に腰椎に過剰なストレスを引き起こし、PVMの過活動を同時に伴う」とされていることから、PVMの先行収縮、大殿筋の収縮遅延などの筋の発火順異常は腰痛に大きな影響をもたらす可能性があります。

—発火順を評価する方法

とてもアナログです。例えば、伏臥位で股関節伸展時の大殿筋や脊柱起立筋の筋収縮順を確認したい場合、その筋に触れ、どちらが先に収縮するかを確認します。そして正しい順に収縮しているかどうかを確認します。

–筋の反応性低下

前述の「筋出力の低下」「筋の発火順」などと同様に神経-筋の協調性に異常が生じると、筋の反応性は低下する。筋の反応性とは、適切なタイミングで筋収縮が起こっているのかということです。

例えば、「力を入れて耐えてくださいね」と患者さんに口頭支持しても、筋の反応性が低下していると、いくら筋出力に問題がなくても耐えることができないのです。これはメカノレセプターからの適切なfeed backが生じていないからと考えられています。また、この場合は筋の発火順に異常がある場合も耐えることができません。

—反応性低下を評価する方法

筋の反応性低下は、先ほどの例がわかりやすい。「力を入れて耐えてくださいね」と患者さんに口頭支持して、その後、MMTを行うかのように力を加える。筋の反応性が低下していると、いくら筋出力に問題がなくても耐えることができない。また、筋の発火異常も筋の反応性低下を示唆する重要な所見であることを忘れてはならない。

 

腰痛を施術する際の考え方とは? -構造的アプローチと機能的アプローチに分けて考える!

まずは構造的破綻、すなわち壊れた構造体を修復させることが最優先となります。これが病態(腰痛、ぎっくり腰)に対する構造的アプローチです。そして、構造的破綻修復後は、壊れた原因となる機能的破綻を改善する必要があります。それが機能的アプローチです。

こうして、腰痛を攻略するためには、構造的破綻から機能的破綻へと施術を進める必要があるのです。そうすることによって、そもそもぎっくり腰や腰痛になる可能性(再発率)を低下させることができるのです。

-構造的破綻は、検査所見を一つ一つ取り除いていくことが重要!

それでは、一体どのように腰痛の施術を展開していくのか?ここではその具体的な方法をお伝えします。構造的破綻の場合、問診、評価、病態把握を進める中で、様々な所見をとりました。構造的破綻はその所見を一つ一つ改善していけばいいのです。

–たった3つの評価→たった3つのアプローチ

私の場合、問診、評価、病態把握と進め、腰痛の病態をあぶりだすことができたら、その中の「評価」で行ったSLR、FNST、運動痛をそれぞれ改善していきます。今一度、評価の部分を見直していただき、どのような評価基準でそれらを判断しているのか?これを確認しておいてください。そして、その理論がわかれば腰痛の改善方法もご理解いただけます。

より具体的な方法を知りたい先生は、こちらから今後のセミナー情報などを最速でお受け取りください。

-機能的破綻は、セルフエクササイズでは改善しない!?腰痛とエクササイズ

多くの文献で、単に筋力を強化したり関節可動域を拡大したりするだけでは、習慣化した異常運動パターンの改善にはつながらないと結論付けられています。
また、単純なエクササイズや筋力トレーニングでは、抑制された筋は正常化せず、抑制されたままエクササイズを行うことになるため傷害が発生する可能性があります。
さらに、抑制され弱った筋に対して筋力エクササイズの目的で抵抗運動を行うと、その活動性は増大するというより、むしろ低下する傾向にあるとも言われている。
なお、機能低下した筋へ外的なアプローチを行うことによって運動制御に変化を与え、改善することができるとされています。このような観点から総合的に考えて、機能改善を図る場合は、治療的介入が必須であることがわかります。

–促通と抑制で機能改善を図る!

機能低下した筋に対して、等張性収縮、伸張反射、タッピングなどの促通刺激や、収縮後弛緩、相反神経抑制などの抑制刺激を利用して機能改善を図ります。評価で機能低下と判定した筋や運動に対して、これらのテクニックを用いて機能改善を図ります。

—注意点

負荷が強すぎる場合は、関節保護に関与する筋が疲労してしまいます。疲労によるモーターコントロールの変化は、関節コントロールの低下をもたらして疼痛を憎悪させるため、疲労を起こさないようにアプローチすべきであり、このことは筋力トレーニングとは大きく異なる点となります。

また、固有受容感覚が低下している場合は、負荷が速すぎると筋が負荷レベルに反応できないため、関節損傷が起こりうることを理解しておく必要があります。よって、負荷を注意深くコントロールし、最初は、ゆっくりとコントロールされたトレーニング運動とし、筋疲労を起こさないようにする必要があるのです。

 

機能改善について、より具体的な方法を知りたい先生は、こちらから今後のセミナー情報などを最速でお受け取りください。

腰痛はどれくらいの期間で改善するのか?

-構造的破綻の改善期間

2003年、シドニー大学でのコホート研究。結果から言うと、急性腰痛は1ヶ月以内に疼痛、機能障害ともに58%の改善がみられた。さらにその改善は3ヶ月後までみられたとのこと。しかし、その後の改善はほぼ一定にとどまり、低レベルの疼痛および障害は3ヶ月から少なくとも12か月までは持続する。と報告されています。

・急性腰痛は1ヶ月以内に58%改善する
・改善は3ヶ月後までみられた
・3ヶ月以降はほぼ不変
・3~12ヶ月は低レベルの疼痛は持続する

-機能的破綻の改善期間

こちらは当院の実績となりますが、機能改善は最速で1ヶ月、最長でも3か月で改善することができます。通院頻度は週に1~2回です。個々の患者さんによって機能低下レベルに相違があるため改善にかかる期間は前後します。

–機能改善後の腰痛再発率は?

ぎっくり腰の再発率は4.8%、軽度の腰痛の改善率は49.1%、軽度の腰痛の発生率は全体的に低下。さらに、腰痛になった場合の施術期間について、過去に1ヶ月以上の施術期間を要していたのは34%。機能改善後は3.8%にまで低下している。このように施術期間においても、大幅な施術期間の短縮を図ることができています。※2018年2月14日時点 当院機能改善患者への調査による

 

腰痛施術の考え方と具体的な施術方法のまとめ

いかがでしょうか?腰痛が治らない理由を理解することによって、どうやったら腰痛を改善することができるか?その具体的な内容をお話しさせていただきました。そして、今までの常識や考え方のままで腰痛を改善することはできないということがご理解いただけたのではないでしょうか?

腰痛を施術の考え方と具体的な施術方法をまとめると…

・まずは、なんで腰痛が治らないのかを理解する
・腰痛は構造的破綻と機能的破綻に分けて考える
・構造的破綻において原因を特定するためには問診、評価、病態把握が重要
・機能的破綻において原因を特定するためには筋出力、発火異常、反応性を評価する
・構造的破綻を改善してから機能的破綻を改善する
・機能的破綻を改善することで腰痛の再発率が低下する

結果の出なかった今までの常識や考え方から脱却し、そして新しい腰痛施術の考え方と具体的な施術方法を参考に、ぜひ先生の腰痛施術にご活用していていただきたいと思っています。

 

腰痛施術を極めたい方へ腰痛のセミナー

ここでは公開しきれていない、腰痛の具体的なアプローチや考え方は、実際に先生にお会いできるセミナーという形でその全てをお伝えしています。

より具体的な方法を知りたい先生は、こちらから最速で今後のセミナー情報をお受け取りください。

 

この記事内で参考にした文献および関連文献

※以下文献の中で使用していない文献もございますが、私がお伝えしている構造的アプローチ、機能的アプローチでは以下全ての文献を参考に構成しております。
1)Acute low back pain: systematic review of its prognosis.BMJ. 2003 Aug 9;327(7410):323.
2)兵頭甲子太郎:股関節外転筋の等尺性収縮運動時における筋電図学的検討―負荷量と外転運動角度が筋活動に及ぼす影響についてー.理学療法学,2009,24(4):561-564.
3)三浦雄一郎:体幹筋機能の研究と慢性腰痛症の運動療法.関西理学,2001,1:7-13.
4)鶴見隆正,松本規男,上田哲士:大殿筋筋力増強肢位の筋活動について.臨床理学療法,7(2):(147)
5)Richardson C,hodges P,hides H:therapeutic exercise for lumbopelvic stabilization 2nd ed.Churchill Livingstone,Edinburgh,2004,pp158-199.
6)生方瞳 他:慢性腰痛症における多裂筋筋硬度の左右差について.理学療法科学,2014,29(1):101-104.
7)猪飼哲夫,辰濃尚,宮野佐年:歩行能力とバランス機能の関係.リハビリテーション医学,2006,43:828-833.
8)Walsh J,hall T:Classification of low back-related leg pain:do subgroups differ in disability and psychosocial factors?.J Man Manip ther,2009,17(2):118-123.
9)大槻佳右:病期別の非特異的腰痛症3症例に対する大腿筋膜張筋へのダイレクト・ストレッチングと中殿筋への筋力強化運動による即時的効果-シングルケースによる検討-.理学療法科学,2014,29(1):81-85
10)世古俊明 他:股関節肢位と運動の違いが大殿筋、中殿筋の筋活動に及ぼす影響.理学療法科学,2014,29(6):857-860.
11)山本宏茂 他:大腿筋膜張筋の筋活動-股関節肢位及び各種動作における検討-.理学療法学,1997,第24巻第5号:270-273.
12)松田 雅弘 他:股関節外転筋疲労が片脚立位姿勢の制御と筋活動に及ぼす影響.理学療法科学,2011,26(5):679-682.
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14)末廣忠延 他:慢性腰痛者における腰部の臨床不安定性と股関節伸展運動時の背部筋群及び股関節伸展筋群の活動開始時間との関係.理学療法科学,2016,31(2):329-333.
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22)菊池臣一:機能からみた病態.腰痛,医学書院,2003:43-60.
23)紺野慎一:非特異的腰痛に対する運動療法の理論.非特異的腰痛のプライマリケア,三輪書店,2010:102-104.
24)石井慎一郎:運動器疾患の理学療法における運動制御・学習理論応用の考え方.理学療法,2009,26(7):803-814.
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32)小泉圭介:コアスタビリティートレーニングの意義と基本プログラム.理学療法,2009,26(10):1195-1202.
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34)伊藤俊一他:腰部脊柱安定化とコアスタビリティトレーニング.理学療法,2009,26(10):1211-1218.
35)小倉秀子:欧米におけるコアトレーニング.理学療法,2009,26(10):1234-1242.
36)荒木秀明:体幹機能評価-股関節・仙腸関節・腰椎を一つのユニットと捉える考え方による評価を中心に-.理学療法,2006,23(11):1455-1462.
37)Richardson C,hodges P,hides H:therapeutic exercise for lumbopelvic stabilization 2nd ed.Churchill Livingstone,Edinburgh,2004,pp17-19.
38)佐藤謙次:腰椎捻挫の理学療法.理学療法,2006,23(7):1020-1035.
39)室増男:筋力増強の代表的方法と効果.理学療法ジャーナル,2010,44(4):269-276.
40)片岡晶志:運動療法-自主訓練プログラムの進め方.CLINICAL REHABILITATION,2011,20(1):28-32.
41)ジョンウォーフィル:図説 筋の機能解剖 第4版.医学書院,2015:76-77.
42)中丸宏二 他:ムーブメント ファンクショナルムーブメントシステム 第1版.有限会社ナップ,2014.
43)小関博久 編:外来整形外科のための退行性変性疾患の理学療法 第1版.医歯薬出版株式会社,2010,198-201.
44)荒木秀明:非特異的腰痛の運動療法 症状にあわせた実践的アプローチ.株式会社医学書院,2014,75-76.
45)Bogduk N,Pearcy M,Hadfield G.Anatomy and biomechanics of psoas major.Clin Biomech 1992;7:109-119.
46)齋藤昭彦:腰椎・骨盤領域の臨床解剖学 原著第4版 腰痛の評価・治療の科学的根拠.エルゼビア・ジャパン株式会社,2008,100,188.
47)柳澤健:運動療法学.金原出版株式会社,2006,16-27,330-336.
48)渡邊裕之:スパイナル・コントロール 体幹機能と腰痛の最新科学.有限会社ナップ,2015.
49)Phil Page,Clere C.Frank,Robert Lardner:ヤンダアプローチ マッスルインバランスに対する評価と治療.三報社印刷 株式会社,2013.
50)齋藤昭彦:腰痛に対するモーターコントロールアプローチ 腰椎骨盤の安定性のための運動療法.株式会社医学書院,2009.
51)村上栄一:仙腸関節由来の腰痛.日本腰痛会誌,2007,13(1):40-47.
52)片田重彦:仙腸関節機能障害とAKA-博田法.脊椎脊髄ジャーナル,2016,29(3):201-207.
53)Anne Shumway-Cook,Marjorie H.Woollacott:モーターコントロール 研究室から臨床実践へ 原著第4版.医歯薬出版株式会社,2015.
54)Shirley Sahrmann and Associates 第1版.医歯薬出版株式会社,2013.
55)伊藤宏司:筋運動制御機構.計測と制御,1976,25(2)131-135.
56)後藤淳:筋緊張のコントロール.関西理学,2003,3:21-31.

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