From：黒川 純

＠診察室より、、、

 

昨日、中学生の男の子が
お母さんと一緒に来院した。

その男の子はソフトテニス部で
昨日も普段通りに練習をしていたのだが、

フォアハンドで左足に
体重をかけたとき、、、

 

「イタッ！」

左足に痛みを感じた。

 

そのあとは、、、

普通に歩けなくなり
来院時にはケンケンに
近い状態で歩いていた。

 

お母さんも以前、
肉離れをしたことがあって
当院で施術を受けたことがある。

 

そのため、、、、

「息子も肉離れかもしれない」

ということはすぐに
気づいたといっていた。

 

患部をみると踵骨から
5㎝ほど近位に3㎝大の発赤が見られた。

「あ、ここ赤くなってるね」

私がそういうとお母さんは、
「虫刺されかと思ったんですけど…」

確かに虫に刺されると
同じように赤くなる。

 

ただ、虫刺されの場合は
局所的に腫れてくるし、

中心部に虫に刺された
痕跡が残っている。

 

しかし、患者さんの発赤には
そのような腫れ、痕跡は全くない。

 

だから、、、

すぐに虫刺されではない
ということはわかった。

しかも歩行時や足関節の背屈をすると、
その発赤部で痛みが出ていたのだ。

 

さらにそこを触るとかなり痛がる状態。

ここまでくればその発赤が
虫刺されである可能性はかなり減るだろう。

 

ではどんな病態が
考えられるだろうか？

患部では一体何が
起こっているのだろうか？

 

すでにある程度わかった先生も
おられるかもしれないが、
先生もぜひ一緒に考えてみてほしい。

 

ちなみにその他の所見として、、、

膝関節屈曲位および膝関節伸展位での
足関節背屈はともに発赤部で疼痛があり、
これはactiveでもpassiveでも認めた。

荷重は不能。

もちろん、歩行時痛がある。

 

腓腹筋の筋腹には
圧痛所見すらない。

 

また、アキレス腱部に
gap signや陥凹は触れない。

Thompson、Simmonds testに
異常はない。

 

他に膝関節や足関節には
問題はない。

 

ここまでで、
ほぼ病態は絞れただろうか？

さらにエコーで観察すると、
画像上アキレス腱に異常はなく、
Kager脂肪体にも異常はない。

 

ただ、、、、

ヒラメ筋のアキレス腱移行部で
明らかな低エコー像を認めた。

 

もうわかりましたね。

 

最初は軽い肉離れ？

で、赤くなっているのは
虫に刺されたから？

そんな風に考えていた親子。

 

施術家の先生であれば
このような知識はあって当然なので、

間違えることは
ほとんどないと思いますが、

一般の患者さんからしたら
発赤を虫刺されと勘違いして
しまうこともあるんですね。

 

こういうことって
他にもいろいろあると思います。

 

少し前にも、、、

朝起きたら腰が痛くなった患者さん、
実は帯状疱疹だったとか、、、

鎖骨が痛いと訴えて来られた患者さんは
よくみると手掌や足底に嚢胞があり、

すぐに専門医に紹介状を書きましたが、
これはPAO（掌蹠膿疱症性骨関節症）
だったんですね。

 

私たちは、

患者さんの病態を把握して、
適切な施術を行うということは
もちろんですが、

施術できるものかどうかの
判断もしなければなりません。

 

とはいえ、全ての病気の症状や
所見を勉強するとなると
なかなかできることではありません。

でも、初めてみる症状や
よくわからない症状ってあるはずです。

 

そう、気づいていないだけで、
いま目の前にいる患者さんからも
学ぶことってたくさんあるんです。

勉強するって別に本を読んだり論文を
見るだけじゃないんですよね。

目の前の患者さんから
たくさん学ぶことができるんです。

 

こうして1日ひとつでも学びがあれば、
年間365個もの学びがあるわけです。

そう、1日ひとつでいいんですよ。

 

黒川